深夜の六本木、タワーの光
六本木のドライブイン「サルビア」。
日付が変わる頃、そこは普通のサラリーマンではなく、仕事を終えた業界人や、夜の社交界を生きる大人たちが集う特別な場所だった。
この店は少し変わった作りをしていた。長い長いカウンターの向こう側に、ウェイターやウェイトレスが忙しなく歩くための、一段高くなった「ランウェイ」のような通路があった。
彼らの颯爽とした背中越しに見えるのは、巨大なガラス窓。
雨に濡れた駐車場には高級車が並び、その向こうの暗闇の中に、まだライトアップされていない霞んだ東京タワーが凛と立っていた。
煙草の煙、コーヒーの香り、そして威勢のいい常連客の声。
私たちは今、その熱気の上を静かに通り過ぎ、あの日々の記憶を見下ろしている。